
歯ぎしりは、寝ている時に上下の歯をこすり合わせる習癖で、その音が同室の睡眠同伴者(スリープパートナー)の睡眠の妨げとなることもあります。また、寝ている時には、歯ぎしりだけでなく、音を鳴らさずに咬みしめる癖のある人もいます。
専門的には,これらの寝ている時の習癖を睡眠時ブラキシズムと呼んでいます。また、最近は日中の起きている時間帯にも無意識に歯を合わせて咬みしめている人がいて、覚醒時ブラキシズムと呼んでいます。
これらの非機能的な顎の動きであるブラキシズムは、歯のすり減り、歯周病、歯がしみる知覚過敏、歯の被せた冠の脱離や破損、歯や歯の根の破折、咀嚼筋や顎関節への負荷による顎関節症、頭痛など、歯科領域における多くの障害に関与するリスクファクターと考えられています。
歯ぎしりが起こる原因は?
- ストレス
- 睡眠障害
- 悪い嚙み合わせ(不正咬合)
- 悪い歯並び
- 歯が抜けたまま放置する(歯の欠損)
- 疲労
- うつぶせ寝、横向き寝
歯ぎしりをそのまま放置すると、起こる二次障害
歯への障害
- 歯がすり減る、削れる(これを咬耗と言います)
- 知覚過敏が生じやすい
- 被せもの、詰め物の破損・脱離
- 歯牙破折・歯根破折
歯の周りの組織への影響
- 歯がグラグラする
- 歯や歯ぐきに違和感や痛みを感じる
顎関節への障害
- 顎関節症になる
- 肩こりや首こりや頭痛を発症する、さらには腰痛まで引き起こす可能性がある
- 視力の低下など
歯ぎしりのセルフチェック

- 日中、集中している時に上下の歯を当てたり、歯を食いしばっていることがある
- 朝起きた時に顎や頬の筋肉が張っている(こっている)ことがある
- 頬や舌に歯を押し付けた跡が残っている
- 歯ぎしりしていると近親者に言われたことがある
- 歯がすり減って短くなってきている
- 歯の根元が削れている
- 下の歯の内側や上の歯の頬側、上顎の真ん中に骨のコブがある
- 詰め物がよく取れたり、割れたりする
- 知覚過敏の歯が多い
- 歯に亀裂が多く見える
歯ぎしりに対して行う治療
歯列全体を覆うプラスチック製またはシリコン製のマウスピース(スリープスプリント・ナイトガード)は、現在,世界的に最も標準的に使用されているブラキシズム治療法です。マウスピースを使用してもブラキシズムを抑制できない場合もありますが、歯や顎関節などの組織を保護する効果が期待されます。
スプリント使用に際しては、長期間の使用でスプリントがすり減ったり、スプリントを外した時の咬み合わせが変化する可能性があるため、必要最小限の使用とし、長期継続の場合は必ず定期検査を行うようにしています。
※咬み合わせの異常がブラキシズムの直接的な原因になっていると判断できないので、現在ではブラキシズムを改善する目的のためだけで歯を削って調整する治療は行いません。
しかし、一部の歯にだけ大きな力が加わり、歯周病などに悪影響を及ぼすと判断された場合には、過剰な力が加わらないように噛み合わせを調整するなどの対策をとることもあります。
歯ぎしり治療の流れ
①マウスピース製作のための型取り
②マウスピースの受け渡し、使用説明
③数週間後、経過観察